「今のシステムを移行したいが、何から始めればいいか分からない」という状態からのご相談は珍しくありません。この記事では、移行を業者に依頼するときの流れを、発注する側の視点で5つのステップに分けて説明します。
先に結論です。
- 現状の情報を集める(無くても依頼はできます)
- 移行したい理由を1行にする
- 調査だけを先に頼む
- 見積もりは「切り戻せるか」を見る
- 並行運用で切り替える
ステップ1:現状の情報を集める(無くても構いません)
手元にあると話が速いのは次の4つです。
- サイトやシステムのURL
- サーバーの契約先(レンタルサーバー名・請求メールなど)
- いつ頃、誰が作ったものか
- 仕様書・設計書(あれば)
重要なのは、全部そろっていなくても依頼はできるという点です。仕様書が残っていない、前の担当者と連絡が取れない、という状態からの引き継ぎは実務では珍しくありません。動いているシステムとデータベースから中身を読み起こすことは可能です。「資料が無いから頼めない」で止まっているなら、その心配は不要です。
ステップ2:移行したい理由を1行にする
「サーバーのサポート期限が近い」「たまに落ちる」「今のサービスが値上げした」「機能が足りない」——理由によって、やるべき作業がまったく違います。
たとえばサポート期限(EOL)が理由なら、まず何日まで動くのかを確定させるのが先で、期限に間に合わない場合は暫定的に安全な状態を作ってから移行する手もあります。「たまに落ちる」が理由なら、移行ではなく、落ちても自動で復旧する構成に直すだけで解決することもあります。
理由が1行になっていれば、業者は見積もりの精度を上げられます。逆に理由が曖昧なまま「移行してください」と頼むと、不要な作業まで見積もりに乗ります。
ステップ3:調査だけを先に頼む
いきなり移行の見積もりを取るのは勧めません。現状が分からないまま出された金額は、あとで必ずずれるからです。
まず現状調査だけを小さく発注するのが安全です。調査で分かるのは、動いている機能と止まっている機能、危険な箇所、期限が迫っている箇所、そして「直す・作り替える・そのまま使う」それぞれの費用感です。
当方の場合、調査のみのご依頼は規模により1万円台からお受けしています。調査の結果「手を入れないほうがよい」と判断すればそうお伝えしますし、調査報告書を持って他社に相談していただいても構いません。調査費だけで終わっても、判断材料は手元に残ります。
ステップ4:見積もりは「切り戻せるか」を見る
移行の見積もりを比べるとき、金額より先に確認すべき項目があります。
- 旧環境をいつまで残すか(移行前のデータを消さないか)
- 切り戻しの手順があるか(問題が出たら元に戻せるか)
- データ移行後に、件数と内容の突き合わせをするか
- 移行後の保守は含まれるか、別料金か
安い見積もりは「一発で切り替えて旧環境を即削除」という前提のことがあります。それで問題が出ると戻り先がありません。切り戻せる計画になっているかが、業者の経験値が一番出るポイントです。
ステップ5:並行運用で切り替える
安全な移行は、新しい環境を旧環境と並行して動かし、問題がないことを確認してから切り替えます。データの移行では、移行前後で件数と内容が一致しているかを突き合わせ、発注側にも確認してもらいます。
切り替え後も旧環境はしばらく残します。ここまでやって、はじめて「移行が終わった」と言えます。
費用の目安
規模と状態で変わりますが、当方の場合の目安です(税別)。
- 現状の調査・原因の切り分け:1万円台〜(最短即日〜数日)
- サーバー移行・インフラ改善:15万円〜(1〜3週間)
- 業務システムの作り替え:120万円〜(4〜10週間)
どの業者に頼む場合でも、「調査と移行を分けて発注できるか」を聞いてみてください。分けられる業者のほうが、途中でやめる自由が発注側に残ります。
当方でも、仕様書が無い状態からの調査・引き継ぎ・移行のご相談を受けています。切り戻せる状態を保ったまま進める方針や、実際に担当した引き継ぎ案件の内容はシステムの移行・引き継ぎにまとめています。